人材開発研究大全 第27章教師の専門性発達 まとめ
人材開発研究大全 第27章教師の専門性発達の内容について読書メモです。
こちらの読書会に向けた事前のまとめになっています。 career-update-org.connpass.com
教育の質を向上するためには、教師の質を高める必要がある
- これまでは教師となるための条件(資格や採用基準)の設定に焦点が当てられることが多かった
- 教師が教職についてからも「学習者」として成長していく存在という認識が持たれたのは最近
- 日本では教員育成は大学で行われる「開放性」が採られている。
- 学生は教職とは別の専門分野について勉強しながら教員免許を取得する
- 輩出する教師の質に大学が責任を持つという考えとは隔たりがある
- (急に)教員養成についてリフレクションという概念に関する研究に注目していく
日々の実践を通じて経験値を蓄えていく
- 教師は複数の学習者を集団で指導しつつ、学習者1人ひとりに合わせた対応を取ることも求められる
- 「あのときの対応は正しかっただろうか」などと内省(リフレクション)することが、教師の成長に重要な役割を果たす
- 自らの経験から学びを得ていく
- 教師だけではなく、学習者(生徒)もリフレクションを行っている
学習者のリフレクション
- デューイの「思考の方法」によれば思考の種類は4つある
- 頭をよぎることすべて
- 直接見たり、聞いたり、嗅いだり、味わうことができないことについて想像すること
- 何らかの証拠や証言に立脚するもので、その信念が立脚している土台をさほど問わない思考であるもの
- 何らかの証拠や証言に立脚するもので、どの土台が丹念に吟味されているいるもの
- 3つめと4つめの違いをつくるものがリフレクション(デューイの定義では省察的思考)
- 省察的思考は本来、明確な帰結を含めるものでなければいけない
- しかし例えば、人間関係における対応など、こうすることが正しかったという論理的で普遍的な「帰結」が存在しないものがある
- その中で、個別具体的な関係や文脈などに応じて経験を積みながら、少しずつ精度の高い結論を1人ひとりが出していく必要がある
- 「帰結なき事柄の探求」
帰結なき事柄の探求
- 明確な答えが出ない問題に向き合い、自分たちなりの答えを見つけていくようにするためには、学習者たち自身のリフレクションを促すしかない
- 「行為についてのリフレクション」と「行為の中のリフレクション」
- 「行為についてのリフレクション」は過去のできごとを振り返って、新たな知識を組み立てること
- 「行為の中のリフレクション」は何か行為をしているその瞬間的に、ほぼ無意識的にとっさに思考し、判断し、次の行為をする
- (ムズカシイ)行為しながら思考することと、行為後に意識的にその行為を思考する関係が、行為と思考の間の関係として成立し、両者は循環的螺旋的プロセスで行われていく
- 状況と対話しながら瞬時に思考し行動する。新しく直面した不確実な問題状況に対処し、状況を変容させるべく、状況との対話をしながら行動していく
- (感想)Agileとか、TDDっぽい
教師のリフレクション
- 予期のリフレクション(行為の前のリフレクション)
- 起こり得る可能性について熟考し、どのような行為を取るかを決め、計画を立てる。そうして、予想した出来事や計画した行為の結果として、どのような経験が起きるかを先読みする
- 能動的あるい双方向のリフレクション
- その場で起きている子どもたちの様々な行動から、出来る限りの情報を読み取って、瞬間的に対応しようと試みる。瞬時のリフレクション。
- 教育学的な場面における思慮深い行為
- 完全に論理的・合理的な判断を行うことが不可能で、かつ、瞬間的に判断しなければならない場合、目の前の子どもたちの状況をみながら、その背景にある感情や経験について出来る限りの配慮をした上で、判断し、行動する
- 思慮深さ、マインドフルネス
- 追憶のリフレクション
- 行為についてのリフレクションと同じ
- こどもたちとの過去の経験をふりかえることで、新たな気づきや知見を得て、専門家として成長する
リフレクションの手法
- 教師はどこでリフレクションのスキルを習得するのか
- リフレクションのスキルを伸ばす手法や仕掛けに関する知見は近年までほとんど蓄積されてこなかった
- コルトハーヘンは、理想的なリフレクションのプロセスを表すモデルを開発し、オランダ・ユトレヒト大学の教員養成課程に取り入れた
コルトハーヘンの教師育成プログラム改革
- 特徴は、学生たちが学校現場で「経験学習」を行う期間を約11週間と長く確保したことと、経験学習の期間の前後には、大学でその経験についてリフレクションし、理論に立ち戻る期間を設けたこと
- 現場ー大学往還型のプログラム
- 教育に関する知識を抽象的な知識として覚えさせるのではなく、学校現場で直面する問題の解決や対応に役立てる実用的で身近なものとする
- 自らの経験や関心に沿った形で理解し、習得できることを目指している
ALACT モデル
- Action : 行為
- Looking back on the situation : 行為場面の振り返り
- A Awareness of essential aspects : 本質的な諸相への気付き
- Creating alternative methods of action : 行為の選択肢の拡大
- Trial : 試行
「本質的な諸相への気付き」が飛ばされて、本質的な要因への気付きがないまま、原因を曖昧に推測して、具体的な行動が何も示されない結論で満足し、思考を終えてしまう人が多い。「今日は調子が悪かった」「次はがんばります」
8つの問い
「本質的な諸相への気付き」をより確実に達成するための仕掛け。「行為場面の振り返り」で用いる
0. どのような文脈だったか?
- あなたは何を考えていたのか?
- あなたはどのように感じていたのか?
- あなたは何を望んでいたのか?
- あなたは何をしたのか?
- 児童生徒は何を考えていたのか?
- 児童生徒はどのように感じていたのか?
- 児童生徒は何を望んでいたのか?
- 児童生徒は何をしたのか?
コア・リフレクション
- ALACTモデルに従ったリフレクションが有効的ではなく、より深いものが絡んでいるケースがある現実に注目し提示されたもの
- その人のパーソナルな領域にまでは入り込まないながらも、核心からの変化を生み出すことができるより深い形のリフレクション
たまねぎモデル
リフレクションする内容を7つの層に分類する(上から順番に外側の層で、内側の層になっていく)
- 行動
- 能力
- 信じていること
- アイデンティティ
- 使命
- コアにある資質(強み)
外側から内側に向かってリフレクションを行い、齟齬を見つけた場合には、内側を入念にリフレクションし、言語化することから始めて、それらに基いて外側の層の内容を修正する
リフレクションを促す専門家としての教師教育者の可能性
- 教師の成長においては、リフレクションを通じて自分なりの経験知を蓄積し、その経験知の正当性や効果を随時点検していくことが重要
- 理想的なリフレクションのサイクルを回していけるように教師1人ひとりを支援する必要がある
- リフレクションを促す役割を担えるような教師教育者の養成が問われなければならない
- 日本においては、一般的には教師教育者という言葉自体になじみがなく、教師を育てる責任を担う専門家を大学等に築いていくことが求められる
BeerIQというビール好きのためのボードゲームを購入しました
BeerIQという興味深いタイトル
先日ハワイに旅行に行ったのですが、何となく雑貨屋さんのようなところで商品を眺めていたら、BeerIQ - The beer quiz game - HELVETIQというボードゲームを見つけました。BeerのIQを測るという時点で、実際のIQは低そうだなという感が否めないですが、だがそれがいい、ということで、購入してみました。
ちなみに、ちょっと調べてみましたところでは、他にもWineIQとかMusicIQとかIQを測るゲームを出しているみたいでした。
どんなゲームなのか
ボドゲ感が多少あるぐらいで、基本的にはクイズです。ビールの知識がある人が圧倒的に有利です。
ボドゲ的なスペックでいうと、箱の裏には
- 2〜12人で遊べる(ただし、3人以下はちょっと変則ルールで基本4人以上)
- 対象年齢は21歳〜99歳(おそらく実際には、21歳以下でも100歳以上でもプレイ可能)
- プレイ時間の目安は45分
- チームでプレイする
- さくっと遊べて、スコアが出るのが楽しい
- 楽しく学べる
- 常に誰かが勝つ、というわけではない
と書かれてます
細かいルール
事前準備
- 各チームが2人以上になるように分かれます。ただし、全部で4チーム以内にします。
- スコアキーパーとして「店員」役を1人選びます
- 店員役がランダムで24枚のクイズカードを選んでシャッフルしてデッキを作ります(全部で200枚のカードがあります)。残ったカードは使わないので片付けます
- カードの濃い緑の面を使うか薄い緑の面を使うかを決めます(チームごとではなくて、全体でどちらの面にするかを決める)
- 濃い緑の面の方が問題が難しいみたいです
ゲームのやり方
2ラウンドプレイします
1ラウンド目
- 一番若い人がいるチームから始めて、デッキの一番上のカードを取ります
- チームの1人が読み手になって、チームの残りの人が回答者になります
- 読み手は、まず自分ひとりで(声に出さないで)クイズを読みます。それから、問題文を選択肢を含めて読むか、選択肢を含めないで読むかを決めます
- どちらにするかを決めたらそれを宣言して、問題文を読みます
- 回答者が答えを言います
- 選択肢無しで答えが合っていたら4ポイント、選択肢ありで答えが合っていたら2ポイント、答えが間違っていたらマイナス2ポイントになります
- 店員はスコアカードに点数を記入します
- 使ったカードはテーブル中央に破棄して(デッキには戻さないで)、時計回りで次のチーム(左側のチーム)にデッキを渡します
- 全てのカードが無くなるまでこれを繰り返します
2ラウンド目
- 破棄されたカードを集めなおして、再度シャッフルします
- 1ラウンド目に最後に答えたチームの次のチーム(左側のチーム)から2ラウンド目を始めます
- 同じようにデッキの一番上のカードを読み手が取って自分だけでまず問題を読みますが、今度は、問題文中に引かれた1本線と2本線の部分だけを読みます。読み手は1本線だけを読むか、1本線と2本線を両方読むかを決めます。
- これ以降の流れは1ラウンド目と同じで、全てのカードが無くなるまで続けます
- 2ラウンド目が終了したらゲーム終了となります。店員はどのチームが一番BeerIQが高かったかを発表します
どんな問題があるのか
問題をざっと眺めて見ましたが、かなり難しいと思います。ビールに詳しい人なら知ってるのかもしれないですが。
あと、そろそろ勘の良い方はお気付きかとは思いますが、これ問題文は全て英語なんですよね・・・なので、ビールの知識の前に、英語でつまずく可能性もありますw
例えば、どんな問題があるかというと
What is the purpose of using beer in gardening?
What Belgian beer has a cherry flavor?
What style of beer is Guinness?
という感じです。
一緒に遊んでくれる方募集中です
というわけで、ゲームをするというよりは、ビールの勉強会みたいになってしまいそうではありますが、せっかく買ったので一緒に遊んでくれる方絶賛募集中です。とりあえず、いつもお世話になっている某社のボドゲ部と次回のsteakrbかよちよちbeerには持っていきたいと思います。
いきなり真剣に2ラウンドするのはつらいので、単純にクイズに挑戦するとかでも良さそうだなーと思ってます。
人材開発研究大全 第22章越境学習 まとめ
人材開発研究大全 第11章の内容について読書メモです。
こちらの読書会に向けた事前のまとめになっています。 career-update-org.connpass.com
越境学習が求められる社会的背景
イノベーションが求められる
- イノベーションを起こすためには、「新たな起動の変更」が必要
- 「新たな起動の変更」のために、既存の価値観との矛盾や衝突を引き起こす覚悟が必要
- しかし、組織に慣れると組織への過剰適応や能動的惰性に陥り、最終的には「文化的無自覚性」の境地にまでいたることも
- 異なる価値観を持った他者と出会うことで、自分が普段前提としている価値観を意識化し、その価値観をゆさぶる契機となる
- これが従来の慣行軌道から離れるきっかけとなる
キャリアに関する考え方の変化
- 雇用の流動性が高まり、キャリアが「組織内部での出世」を必ずしも意味しなくなった
- 組織に依存したキャリアではなく、個人が自律的にキャリアをマネジメントすることが求められる
- 組織の外部にも目を向けなければ全体像がとらえられない
越境学習に関する研究
参加する人と目的
- 「研究開発職」「スタッフ職(広報、人事管理などの間接部門)」「営業職」「その他」で最も多いのが、「スタッフ職」
- 参加する理由は「自分の知識や技術の専門性を高めたいから」「新しいアイデアの着想を生み出したいから」「自分の仕事を見つめ直したいから」
- 不安や所属組織に対する不満は理由ではないという結果
成長に繋がるのか
- 成長実感が異なるか
- 異なる。勉強会参加者の方が成長実感が高い
- 組織に対する愛着が異なるか
- 社外に出ているからといって愛着がないわけではない
- 勉強会に参加する理由と成長実感について
- 明確な目的意識を持って参加している人の方が成長実感が高い
越境学習研究の今後
- 社外に出た個人が学んだことをどのように社内に還流するのか
- 勉強会だけではなく、プロボノなど多様な越境の仕方がある
- 越境学習の場をどうデザインしていくのか
- 例として大学授業に社会人が参加した事例を紹介
- 大学生との関わりを通じて、人に教えることの学びを深めたり、自分の仕事を振り返るきっかけになったりしている様子が見える
- 例として大学授業に社会人が参加した事例を紹介
「現代世界における意思決定と合理性」読書会にて学んだ『我事において後悔せず』
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少し時間が経ってしまいましたが、現代世界における意思決定と合理性の読書会に参加しましたので、内容を自分なりに纏めてみたいと思います。
ちなみに、当然私の解釈が入っての纏めになりますので、正確には是非直接書籍を読んで頂きたいのですが、この書籍の特徴として、本文よりも脚注の方が長いんじゃないのか、と思うぐらい脚注に補足説明や誤解しないようにする注意書きがたくさん書いてありまして、訳者の丁寧さが伝わってきましたので、それを雑に纏めてすみません、という気持ちでいます(笑)。
2種類の合理性
認知科学では合理性には2種類あって、1つが「道具的合理性」もう1つが「認識的合理性」です。
道具的合理性というのは、何か目的とか欲しいものがあって、それを達成したり得たりする可能性が高いことする、ということで、例えば、瓶ビールが飲みたいときに栓を抜く必要があるので、豆腐の角を使うよりは、栓抜きを使った方が合理的ですね、ということです。このとき、目的とか欲求そのものの合理性については評価しません。
一方、認識的合理性は、道具的合理性では評価しなかった、目的とか欲求に対する合理性を考えます。例えば、これから車を運転するので、無事に家に帰るためには、瓶ビールが飲みたくてもウーロン茶を飲む方が合理的というようなことです。
道具的合理性は期待値が大きいものを選ぶこと
道具的合理性は、すごくざっくり言えば、期待値の高い方を選びましょう、ということなので、確率と期待結果の掛け算、というような理論になります。つまり数学の問題のようにはっきりと条件が決まっていたら、明確に優劣が決められます。そのような期待価値を最大にするような意思決定を規範モデルと言うそうです。一方で、人間の実際の反応パターンを説明するものを記述モデルと言うそうです。
このとき、記述モデルは規範モデルから外れたものになることが多くなるのがポイントで、これには行動経済学とか心理学に出てくるような、ヒューリスティックやバイアスが関連してきます。
例えば、50%の確率で100万円手に入れられて、50%の確率で90万円損をするという話があったときに、単純な期待値としては、得をする方が大きいですが、プロスペクト理論 - Wikipediaにあるように、損失を回避したい気持ちが強くなるので、この話を受けない、という意思決定が存在しうる、というわけです。
認識的合理性とは確率や期待結果の大きさを見積もること
道具的合理性の規範モデルは、「確率と期待結果の掛け算」による判断になるわけですが、生きていて、明確に確率と期待結果が数値化されていることはほとんどないと思います。それどころか、何が期待結果なのかすら曖昧なことが多い気がします。
認識的合理性とは、そういう確率や期待結果の値をどう見積もるか、という話で、具体的にはベイズの定理が紹介されています。これもすごく雑に言ってしまえば、何かしらのエビデンス資料(情報)から正しく確率を見積もれるか、という話になります。
例えば、ギャンブラーの誤謬という話があって、公平なコインで、5回連続で表が出た後、6回目は表よりも裏の方が出そうと思ってしまうことがありますが、実際には、50%50%というのは変わらないわけです。
このように、認識的合理性も道具的合理性と同じく、人の判断は合理的なものから外れたことをすることがあります。
本当に合理的な判断を出来ていないのか
これまで、道具的合理性、認識的合理性それぞれに、記述モデルは規範モデルを外れてしまうことが多いということになっているわけですが、人間の認知には不合理な部分があるということを前提にしている改善主義者に対して、人間の判断は得られている情報の中で最善のものを選んでいる(規範モデルが適切ではない)というパングロス主義者という意見があるそうです。
例えば、三段論法推理、という話があって
- すべての生物の生物は水を必要とする
- バラは水を必要とする
- ゆえに、バラは生物である
という話があったら、水が必要なものがすべて生物だとは言っていないので、規範モデル的には「ゆえに、バラは生物である」は誤りになるわけですが、
パングロス主義的には、バラは生き物だということを事前に知っている世界において、バイアスが働いて、バラが生物を判断しても合理的ではないと言えない、なぜなら、そのバイアスを抑制して判断することは日常生活において負荷が高く、負の結果を招くものだから、というような理屈になると思っています。
個人的には、ちょっと強引だなとは思ってしまいますが、実際、ありとあらゆる意思決定において、確率と期待効果の大きさを見積もって、期待値の大きいものを選ぶ、ということをやっていたら大変というのには一理あるな、と思います。
改善主義とパングロス主義の両立
そうした中で、改善主義的な合理性とパングロス主義的な合理性を両立するために、二重過程理論を考えます。
これは、脳内には、<タイプ1>と<タイプ2>という2つの処理があるということにして、
- タイプ1はヒューリスティックな処理。速くて自動的
- タイプ2は規範モデルを目指すような処理。分析的で高い演算能力が要求される。
という役割分担を考えるというものです。
これについては、読書会で色々と盛り上がりまして、だいぶ勝手な解釈が含まれますが、最初はタイプ2で考えていたものが、自分の中でタイプ1になっていくものとかがあるんじゃないか、とか、ヒューリスティックとかバイアスの存在を認めた上で、自分の認知をどのように捉えて、またタイプ2のときだけ判断できるのではなくて、タイプ1のときも出来るだけヒューリスティックとかバイアスの影響を受けずに判断できるようになる、もしくは、本当にヒューリスティックとかバイアスを受けないで判断する方が良いのか?みたいな話をしていました。
優れた意思決定戦略は自己修正的である
前段まででだいぶ哲学っぽい感じになってきた気がしますが、本書としては最後に、優れた意思決定の方略は自己修正的なものだ、という話になっていきます。
結局のところ、規範モデルはあっても、人間の認知には何かしらのバイアスがあることや、世の中の変化による確率や期待結果の変化を考えれば、合理的思考とは不変なものではなくて、状況に応じて変化することが必要、という話です。そのためには、メタ合理性が重要になります。
メタ合理性とは、合理性をメタで捉えるということですが、例えば、
- お腹が空いたので唐揚げ200個食べたい
という欲求があったとして、(これを一階の欲求として)それに対して
- ダイエットしなくてはいけないから揚げ物は食べてはいけない
という二階の欲求が発生することを考えます。
この時、二階の欲求よりも一階の欲求を選好することになれば、唐揚げを200個食べることになりますが、一階の欲求よりも二階の欲求を選好することになれば、豆腐を200個食べることになるわけです。
それで、一階の欲求が勝っちゃったな、みたいに考えることはよくあると思いますし、唐揚げと豆腐以外にも食べるものはないかとか、ダイエットするのに豆腐200個は食べ過ぎなんじゃないかとか、そもそもダイエットする必要があるのか自分の人生としては唐揚げを食べて太った方が幸せじゃないか、とか色々考えられて、とりあえず豆腐100個食べてみよう、みたいに方略を選ぶことが出来るわけです。
このようにして、自分の合理性をメタで捉えることによって、自己修正できるようになっていく(かもしれない)という話です。
また、人間は規範的モデルで常に行動できるわけではないという現実を受け止めて、自己修正的になれるように、今考えている認識や合理的判断を常に疑っていく、ということが大事になってきます。
我事において後悔せず
ここで、タイトルに話が戻るんですが、読書会の参加者の方から、宮本武蔵の『我事において後悔せず』という言葉を紹介してもらいました。
この本を読むまでは、「前向きに生きよう」「くよくよしてもしようがない」みたいなニュアンスで捉えていたのですが(そういう意味もあるんだろうとは思いますが)、ここまでの話を受けて考えると違った見方になるのが、個人的に大変感動的でした。
つまり、後悔をしている時点で、暗に今の自分が正しいと思っているということになってしまう、(自己修正的であるために、)常に自分の考えを疑っていたら後悔は出来ない、という捉え方になるのです。
最後に
本書の最後の文が格好良かったので、引用して終わりにします。
合理性の進化とは<文化進化(cultural evolution)>という未完結の過程として継続中だということである
人材開発研究大全 第11章OJTと社会化エージェント まとめ
人材開発研究大全 第11章の内容について読書メモです。
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TL;DR
- 新卒一括採用〜終身雇用という仕組みが、「失われた10年」を経て変わり、それに伴いOJTも従来とは変わってきた
- OJTを実施する社会化エージェントには、3つの役割分担があり、「協力・配慮」「人脈拡大」「相談対応/内省支援」がそれにあたる
- 社会化エージェントにとって、OJTを実施する支援理由が何であるかは、ネットワーク論やイノベーション論の観点から説明できる可能性がある
本章の構成
- 日本企業における新卒社員の育成
- 新卒社員の育成に役立つ組織社会化研究の知見
- これまでの研究により社会化エージェントが重要なのが分かった。が、その役割についてはまだ不明確
- 実証研究の事例:社会化エージェントの役割分担
- 筆者が社会化エージェントについて研究して、社会化エージェントに重要な役割が明らかになった
- 社会化エージェント研究の展望
- 社会化エージェントの支援行動の理由はまだ不明確。ネットワーク論やイノベーション論から考えられる可能性がある。
本章の詳細
日本企業における新卒社員の育成
- 1920〜1930年頃、新規学卒者の就職難が深刻化したため、学校と企業の結びつきを強め、就職を斡旋した
- 当時、農村において、余剰人員を放出しることが課題だった
- 1980年代までうまくいっていたが、バブル崩壊後、企業の新規採用が減少したり、非正規雇用が増大するなど、就職の流れが大きく変化した
- 経営環境の変化により、企業側は長期雇用と企業内教育から手を引き始めた。これがOJT機能不全に繋がっていく。
- かつては、先輩を見て、将来の自分を想像し、先輩にしてもらったように後輩を育てることが出来たが、先輩は解雇され、新人は入って来ず、久しぶりに新人が入って来ても、先輩に新人を育てる余裕がない、結果、新人を上手く育てられない、という状態が発生しやすい
- かつてと比べて大きな変化が起こったのは、メンバー構成なので、今のメンバー構成でのOJT再構築を目指すのが良いだろう
新卒社員の育成に役立つ組織社会化研究の知見
- 新卒社員の組織社会化の研究によると、組織社会化を効果的にするためには、「社会化エージェント」が重要
- 先行研究を見ても、OJTリーダーや指導員以外がどのように新卒社員に関わったのかまで踏み込んでいない
- OJTを進めるにあたって、新人教育をするための人的・時間的余裕が必要。なので、周囲と協力して行う必要がある
- しかし、先行研究では、直接の担当者以外の社会化エージェントがどのように協力すれば良いのかについて、不明なままである
実証研究の事例:社会化エージェントの役割分担
- 筆者が社会化エージェントが複数の場合における、役割分担を明確にするための実証実験を行った
- OJT指導員は、「協力・配慮」「指導」の2因子が組織社会化に優位な直接効果を与えていた
- OJT指導員以外の他者は、「連携指導」「人脈拡大」「相談対応」「独自指導」「内省支援」の5因子
- 他者①による「人脈拡大」、他者②による「相談対応」「内省支援」というように、組み合わせがある
- 他者①は「異質な人」、他者②は「同質な人」
- これら3者の行動により、新卒社員の組織社会化が促進される
社会化エージェント研究の展望
- OJT指導員以外の他者が新卒社員育成に関与する支援理由が明らかになっていない
- 知識の増加、意欲の向上、学習の機会、職務の再設計などの肯定的な影響がインセンティブとなっている可能性
- 直接の指導員にはあるかもしれないが、他者にもあるようには見受けられない
- メンタリングチェーン(恩返し)の可能性
- 就職氷河期に採用された人は、指導してくれる先輩にも恵まれなかったのでは
- Organizational Citizenship Behavior (組織市民行動) の可能性
- 組織市民行動とは、自由裁量で、公式的な報酬はないが、組織のためにする個人行動
- 他の人がやっているから自分もやろうという「慈善的行動の模範」
- もっと実利的な理由の可能性
- 新卒社員が早く仕事ができるようになれば、自分が楽になる
- OJT指導員や新卒社員に対して恩を売っておき、先々に何らかの見返りを得ようとしている
- 新人教育を通じてネットワークを広げる社会化エージェントを、ネットワーク論で考えてみる
いまさらながら心理的安全性について考えてみました
心理的安全性とは?
ここ数年よく使われる印象の心理的安全性という言葉ですが、使われどころによっては「それ心理的安全性の話なの?」「そこで心理的安全性という言葉使っちゃうの?」と思うことがしばしばあり、一方で自分もちゃんと理解できているかと言われれば当然自信はありませんので、改めて調べてみようかという内容になります。
手元にチームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチがあったので、その第4章「心理的に安全な場をつくる」に書かれている内容を中心にしています。が、ある程度自分の解釈も入ってきますので、「これが正解」というものではないと思います。
心理的安全性は何が良いのか
誤解を恐れず一言で言ってしまえば、「問題vsわたしたち」という構図になれる、ということかなと思っています。
基本的に社会を生きていると、ある程度「対人不安」が存在している人が多いと思います。例えば、
- テックリードが発言した内容が間違っている気がするけど、誰も指摘しないし、自分が間違っているかも
- 上司のやり方に問題を見つけているけど、口を出すと、評価が下がるんじゃないか
- チーム10人中9人が賛成したことに、自分だけ反対すると空気を乱すんじゃないか
みたいな類のやつです。
こういう不安があると、自分が損をするリスクを感じて、ついつい自分が指摘しなくても他の人が指摘してくれるのでは、というような、回避的な行動を取りがちになってしまいます。
心理的安全があれば、こういうものに対して、リスクや不安を感じずに指摘できるので、それによって、わたしたちの知見を集めた状態で問題と向き合うことができますよ(それは強い状態ですよね)。という話だと思っています。
心理的安全性のつらいところ
一方で、問題・失敗を明らかにするというのは、心地よくない人が多いのではないかと思います。なので、それが大丈夫、となっていくことが心理的安全性のキーであり、つらい(難しい)部分なのかなと思っています。本からの引用ですが、
心理的安全は、メンバーがおのずと仲良くなるような居心地のよい状態を意味するものではない。プレッシャーや問題がないことを示唆するものでもない。
心理的安全は対立のないチーミングを約束するものではない。いや実際、心理的安全は、あまり安全でない場合に起きるだろう対立や意見の相違を、いっそうたくさん生むかもしれないのである。
自己表現や生産的な討論が歓迎される組織は、人々が率直に発言するという意味でかなり手厳しい場所だ。人々は思っていることを口にし、間違っていることを証明されるのを進んで受け容れるのである。
念のため、言い方とか、個人攻撃はしないとか、信頼や尊敬があるとか、諸々前提も必要な話だと思っていて、喧嘩をしましょう、ということではないです。
結局、心理的安全とはどういうものなのか
これは完全に個人的な認識ですが、Agileとかもそうですが、どういうものが心理的安全というかは、その場その場で違うものだと思っています。
問題に対して立ち向かっていたら、みんながフラットに発言できたのが良いやり方だったよ、多分それは心理的安全って言われているものだね、みたいなことだと思っていて、「どうなったら心理的安全なのか」みたいなことを考えるのは、目的と手段を逆にしてはいけない、的なことで、多くの場合、変な話なのかなと思います。
もちろん、パターンとして真似するとか取り入れるとか、参考にするべき考えであるとは思いますが。
その他
本にもちょっと書かれていましたが、基本的に人間の脳は恐怖などによって回避的な行動をするときより、楽しいことなどで前向きな行動をするときの方がパフォーマンスが高いみたいです。詳しくはまた別の機会に纏めてみたいですが、以前、「接近的動機づけ・回避的動機づけ」という内容を学んだときに知りました。(そもそも脳の中の使う部分が違うので、パフォーマンスが違う、ということのようです)
個人的にはこれはとてもおもしろいなと思っていて、恐怖を無くすとか、楽しいことをやるというのが、(単に集中するから、とかではなく)脳のレベルで違うというのは、それをやる理由や勇気になるなと思っています。
個人的に便利だなと感じる英語フレーズ(完全に独断と偏見です)
普段比較的英語と触れ合う機会が多い環境で仕事をしているのですが(体感チャット・メールの7割ぐらいは英語で、英語のミーティングもそれなりにある)、そうした中でコミュニケーションをするのに、個人的に便利だなと思ったものをつらつら書いてみます。
注意事項としては、私自身はもちろんのこと、相手もネイティブではないことが多いので、正しくないとか不適切とかそういうものを含んでいる可能性もあります。あくまでも私個人の独断と偏見ということで。もちろん、間違って理解しているところとかFB頂く分には歓迎です。あと、直接の会話よりもチャットとかの方が多いので、そういうシーンに偏っているかもしれません。
挨拶、返事など
not at all / np / My pleasure / thank you, too
相手に頼まれて何かしてthank you
的なことを言われた後、返答シリーズです。他にもあるとは思いますが。個人的にはnot at all
とthank you,too
が好きで良く使ってます。
Great / Excellent
相手の作業待ちで、進捗の連絡とか受けたときに、sure
とかだとちょっとさみしいな、テンション低いなと感じたらGreat
とかExcellent
とか言ってテンション高く応えるのが楽しい感じがして良いかなと思ってます
Hi there / Hello there
なんとなくHi
だけだとさみしいときにHi there
というという方がちょっと陽気な感じがするかなと。日本語だと「やぁ」じゃなくて「やぁ!」みたいな?このthereに意味はないみたいなので、Hiだけでも良いので、便利とはちょっと違うかも。。。
I'm looking forward to
受験で頻出だったような記憶があるこの表現ですが、メールとかの締めで前向きなことを言いたいときに使ってます。
表現方法を何となく気にしているもの
Let me
例えば、問い合わせとか受けたときに、I will check it
ではなくて、Let me check it
と言う方がこなれてる感じがするかなと。あとは「知らせて」というときに、Please tell me
じゃなくてLet me know
とか。色々使えて便利です。
every single
毎回とか毎日とかevery time
every day
じゃなくてevery single time
every single day
の方が、毎回毎回感が出るみたいです。毎回毎回これやるのめんどくさいよね、みたいな時に使うと良いのかなと。
I'm sure / I guess / I'm wondering
「〜だと思うんだけど」と言いたい時に、確信度によって変えてます。この辺は本当にニュアンス伝わっているかも分からないので、自己満足感が強いです。あと、sureって結構確信してるニュアンスっぽいですが、違ってるかもと思っててもsure
と言ってしまってます。
認識合わせたいときに使っているもの
I mean / you mean
相手との認識齟齬を防ぐための補足、みたいな使い方ができて便利だなと思います。日本語訳だと「つまり」とかになるみたいですが、自分の感覚としては「〜ってことですか?」「〜ってことが言いたいんですけど」というような言い換えに使ってます。
make sure
相手にちゃんとやってね、ちゃんと認識しておいてね的なニュアンスでPlease make sure to close the ticket
みたいに使ってます。自分の中ではちょっと高圧的な感じを持っているんですが、実際のところは分かりません。
My concern is
質問とかしたときに、気になっているところを強調して説明するのに使ってます。My concern is we cannot restart the application from our side at the maintenance.
みたいな感じでしょうか。。。
その他
you know
これは願望。ちょっと言葉に詰まったときにyou know
と言えるようになりたいです。話すのはとても苦手なので、you know
と言う前に詰まって黙るのが現状。