素朴理論から考えるおじさんの生きる道

教育心理学関係 勉強会/読書会 Advent Calendar 2017 9日目の記事です。

素朴理論とは

正確な定義は、各種専門書をご参照頂きたく、私の理解では、となりますが、自分の経験によって得た理論を「経験則」や「素朴理論」と呼びます。科学的に洗練された理論ではないので、「素朴」ということらしいです。

多くの科学理論も最初は素朴理論であり、それが研究や実験などで洗練されていくことで、科学理論になっていく。なので、科学的には間違っていて淘汰される素朴理論もあれば、科学的にも正しくて生き残る素朴理論もあって、現時点で科学理論となっているものもさらに洗練されて変わっていくこともある、という様に捉えています。

素朴理論の存在意義

私たちは、なぜ素朴理論を持つのでしょうか。教育心理学概論 第5章(P.69)によると

人は,小さい時から身の回りで起きることを観察して,一定の規則性があるものとして捉えようとする。規則性が捉えられると次に何が起こりそうか予測できるようになるので,便利だからだろう。

とありますので、例え、科学的でなくても、自分なりの理論を持っていると、先が読めて便利だ、ということがメリットのようです。

素朴理論の例

例えば、こういうのが素朴理論の例かなと思います。

  • 教科書100回読めば、テストで100点取れるよ
  • 1回つらいことを経験すれば、成長できるよ
  • 雨っぽい匂いがするときは、この後雨が降る

絶対に外れるわけではないけど、科学的に正しいとは言えないかなー、という内容。あと、他にもっと良い方法あるかも、という印象。

おじさんとして考える素朴理論の課題

自分自分の話として、たくさんの素朴理論を持っているのだろうと予想しています。一方で、素朴理論の目的が、「先が読めて便利だ」だとすると、 素朴理論は、予想通りの結果を伴ってはじめて有用ではないかと考えています。

そこで、 おじさんとしては、昔は通用した素朴理論が、今も使えるとは限らないなー と思うわけです。

一番典型的な例が、「笑い」です。

感覚的な、「このタイミングで、これを言うと受けやすい」みたい素朴理論が結構あると思っていて、それがいつまで通用するか(していたか)、自分で気付くことができるのでしょうか…

素朴理論との付き合い方

延々とすべり続ける恐怖に震えていても何も進まないので、素朴理論との付き合い方を考えます。

素朴理論は確実ではない

素朴理論は、自分の経験から作られるので、うまくいった(予想通りだった)経験に基いていると思います。そのため、それが正しいと信じがちですが、一方で、科学的概念との最大の違いは、確度ではないかと思います。つまり、科学理論の方がより確かにその結果を期待できて、素朴理論の方が確からしさが低く期待する結果が得られないかもしれない。

自分の期待値とは裏腹に、確度としては高くない、という事実をまず理解して使うことが大切だと思います。

素朴理論を変化させる

一度うまくいった素朴理論を人は使いたくなるし、維持したくなるのではないかと予想しますが、それを変化させていくことが大切ではないかと思います。特にうまくいかなかったとき。

最初すべるのは仕方ないけど、すべったことで学習して素朴理論をアップデートすることが大切ではないかと思います。

他人に強要しない

ついつい自分がうまくいったので、他の人も同じようにやると良い結果が出るのではと、お薦めしてしまうこともあると思います。「この勉強法すごくよかったら、やってみると良いよ」みたいな感じです。

もちろん有効なことも多々あるとは思いますが、素朴理論の範囲であれば、他の人によって予想通りの結果が得られるとは限らないので、お薦め程度に留めるのが良いかと個人的には考えています。

場を見極めて有効に使っていく

注意点のようなことをたくさん書きましたが、基本的には便利だから我々は素朴理論を使うのだと思います。そして、経験からしか作られないので、年齢を重ねている人は、単純に機会の多さとして、より洗練された素朴理論を持つことに有利だと思います。

思い上がるのは良くないですが、経験則から、トラブルを予期して予防するなど、素朴理論を使うべき場も当然多々あります。そのように場を見極めて有効になるように使っていくことが(それを見極められることが)、重要ではないかと思います。

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