人材開発研究大全 第27章教師の専門性発達 まとめ
人材開発研究大全 第27章教師の専門性発達の内容について読書メモです。
こちらの読書会に向けた事前のまとめになっています。 career-update-org.connpass.com
教育の質を向上するためには、教師の質を高める必要がある
- これまでは教師となるための条件(資格や採用基準)の設定に焦点が当てられることが多かった
- 教師が教職についてからも「学習者」として成長していく存在という認識が持たれたのは最近
- 日本では教員育成は大学で行われる「開放性」が採られている。
- 学生は教職とは別の専門分野について勉強しながら教員免許を取得する
- 輩出する教師の質に大学が責任を持つという考えとは隔たりがある
- (急に)教員養成についてリフレクションという概念に関する研究に注目していく
日々の実践を通じて経験値を蓄えていく
- 教師は複数の学習者を集団で指導しつつ、学習者1人ひとりに合わせた対応を取ることも求められる
- 「あのときの対応は正しかっただろうか」などと内省(リフレクション)することが、教師の成長に重要な役割を果たす
- 自らの経験から学びを得ていく
- 教師だけではなく、学習者(生徒)もリフレクションを行っている
学習者のリフレクション
- デューイの「思考の方法」によれば思考の種類は4つある
- 頭をよぎることすべて
- 直接見たり、聞いたり、嗅いだり、味わうことができないことについて想像すること
- 何らかの証拠や証言に立脚するもので、その信念が立脚している土台をさほど問わない思考であるもの
- 何らかの証拠や証言に立脚するもので、どの土台が丹念に吟味されているいるもの
- 3つめと4つめの違いをつくるものがリフレクション(デューイの定義では省察的思考)
- 省察的思考は本来、明確な帰結を含めるものでなければいけない
- しかし例えば、人間関係における対応など、こうすることが正しかったという論理的で普遍的な「帰結」が存在しないものがある
- その中で、個別具体的な関係や文脈などに応じて経験を積みながら、少しずつ精度の高い結論を1人ひとりが出していく必要がある
- 「帰結なき事柄の探求」
帰結なき事柄の探求
- 明確な答えが出ない問題に向き合い、自分たちなりの答えを見つけていくようにするためには、学習者たち自身のリフレクションを促すしかない
- 「行為についてのリフレクション」と「行為の中のリフレクション」
- 「行為についてのリフレクション」は過去のできごとを振り返って、新たな知識を組み立てること
- 「行為の中のリフレクション」は何か行為をしているその瞬間的に、ほぼ無意識的にとっさに思考し、判断し、次の行為をする
- (ムズカシイ)行為しながら思考することと、行為後に意識的にその行為を思考する関係が、行為と思考の間の関係として成立し、両者は循環的螺旋的プロセスで行われていく
- 状況と対話しながら瞬時に思考し行動する。新しく直面した不確実な問題状況に対処し、状況を変容させるべく、状況との対話をしながら行動していく
- (感想)Agileとか、TDDっぽい
教師のリフレクション
- 予期のリフレクション(行為の前のリフレクション)
- 起こり得る可能性について熟考し、どのような行為を取るかを決め、計画を立てる。そうして、予想した出来事や計画した行為の結果として、どのような経験が起きるかを先読みする
- 能動的あるい双方向のリフレクション
- その場で起きている子どもたちの様々な行動から、出来る限りの情報を読み取って、瞬間的に対応しようと試みる。瞬時のリフレクション。
- 教育学的な場面における思慮深い行為
- 完全に論理的・合理的な判断を行うことが不可能で、かつ、瞬間的に判断しなければならない場合、目の前の子どもたちの状況をみながら、その背景にある感情や経験について出来る限りの配慮をした上で、判断し、行動する
- 思慮深さ、マインドフルネス
- 追憶のリフレクション
- 行為についてのリフレクションと同じ
- こどもたちとの過去の経験をふりかえることで、新たな気づきや知見を得て、専門家として成長する
リフレクションの手法
- 教師はどこでリフレクションのスキルを習得するのか
- リフレクションのスキルを伸ばす手法や仕掛けに関する知見は近年までほとんど蓄積されてこなかった
- コルトハーヘンは、理想的なリフレクションのプロセスを表すモデルを開発し、オランダ・ユトレヒト大学の教員養成課程に取り入れた
コルトハーヘンの教師育成プログラム改革
- 特徴は、学生たちが学校現場で「経験学習」を行う期間を約11週間と長く確保したことと、経験学習の期間の前後には、大学でその経験についてリフレクションし、理論に立ち戻る期間を設けたこと
- 現場ー大学往還型のプログラム
- 教育に関する知識を抽象的な知識として覚えさせるのではなく、学校現場で直面する問題の解決や対応に役立てる実用的で身近なものとする
- 自らの経験や関心に沿った形で理解し、習得できることを目指している
ALACT モデル
- Action : 行為
- Looking back on the situation : 行為場面の振り返り
- A Awareness of essential aspects : 本質的な諸相への気付き
- Creating alternative methods of action : 行為の選択肢の拡大
- Trial : 試行
「本質的な諸相への気付き」が飛ばされて、本質的な要因への気付きがないまま、原因を曖昧に推測して、具体的な行動が何も示されない結論で満足し、思考を終えてしまう人が多い。「今日は調子が悪かった」「次はがんばります」
8つの問い
「本質的な諸相への気付き」をより確実に達成するための仕掛け。「行為場面の振り返り」で用いる
0. どのような文脈だったか?
- あなたは何を考えていたのか?
- あなたはどのように感じていたのか?
- あなたは何を望んでいたのか?
- あなたは何をしたのか?
- 児童生徒は何を考えていたのか?
- 児童生徒はどのように感じていたのか?
- 児童生徒は何を望んでいたのか?
- 児童生徒は何をしたのか?
コア・リフレクション
- ALACTモデルに従ったリフレクションが有効的ではなく、より深いものが絡んでいるケースがある現実に注目し提示されたもの
- その人のパーソナルな領域にまでは入り込まないながらも、核心からの変化を生み出すことができるより深い形のリフレクション
たまねぎモデル
リフレクションする内容を7つの層に分類する(上から順番に外側の層で、内側の層になっていく)
- 行動
- 能力
- 信じていること
- アイデンティティ
- 使命
- コアにある資質(強み)
外側から内側に向かってリフレクションを行い、齟齬を見つけた場合には、内側を入念にリフレクションし、言語化することから始めて、それらに基いて外側の層の内容を修正する
リフレクションを促す専門家としての教師教育者の可能性
- 教師の成長においては、リフレクションを通じて自分なりの経験知を蓄積し、その経験知の正当性や効果を随時点検していくことが重要
- 理想的なリフレクションのサイクルを回していけるように教師1人ひとりを支援する必要がある
- リフレクションを促す役割を担えるような教師教育者の養成が問われなければならない
- 日本においては、一般的には教師教育者という言葉自体になじみがなく、教師を育てる責任を担う専門家を大学等に築いていくことが求められる